本
映画の日本側制作では、木製の古い電信柱やベニヤ板で作った、実物大の模型・戦艦
長門や空母赤城の飛行甲板が作られ、実際に
零戦に似せた改造飛行機を飛ばして撮影されました。今ではCG技術を駆使した映像に慣れてしまっていますが、徹底した実物主義で作られており、また、何より、ハリウッド映画特有の
プロパガンダ映画色が薄く、どちらかと言うと日本寄りの立場から描かれた映画に仕上がっています。
米国の敗戦を描いていることから、興行的には失敗でした。たしかに真珠湾の爆撃シーンはリアルで、日の丸を付けた日本軍機の爆撃を受け逃げ惑う米兵目線で見たカットが目立ちます。アメリカ人は見ないでしょう。
映画の題名にもなった「トラトラトラ」ですが、どんな意味があるのでしょうか?
公式には意味はないとも言われていますが、トは突撃せよ!のト、ラは雷撃隊のラを意味するとの説があります。つまり、トラは「突撃せよ!雷撃隊!」となり、「トラトラトラ」はその連送になるのです。
では、なぜ雷撃隊の突入が奇襲の成功を意味するのでしょうか?
米側に日本の攻撃を悟られずハワイの対空防衛が全くない、奇襲の場合、敵の対空砲火が激しくなる前に超低空で敵の懐に飛び込む必要のある
雷撃機を先に突入させる、逆に米側の迎撃体制が整っている、強襲の場合は対空砲火制圧のため爆撃隊を優先させることが事前に決まっていました。したがって、雷撃隊の突入ということは奇襲と言うことになるのです。
実際「トラトラトラ」を打電した、
「赤城」攻撃隊・飛行隊長の淵田美津雄中佐は寅年生まれの自分にとって縁起が最高だと喜び、勝利を確信したと言います。また、この発信は、三千浬離れた東京の
大本営、広島の
連合艦隊旗艦「
長門」でも受信されました。このことに当時の航空機搭載の小型電信機の出力では無理だろうと思っていたが、
千里往く虎、千里を帰ったのだろうと思ったとも後に述べています。
真珠湾攻撃での
雷撃隊(指揮官・村田重治少佐)の活躍はすさまじく、
九六式艦上攻撃機(好きだったな~小中学生の時ハ
セガワと
タミヤのプラモを作りました)40機が参加し、艦船への魚雷命中は36発(米発表では28発?)と大活躍しました。
本作戦で、停泊中とはいえ海戦の主力である戦艦を航空魚雷2~3発で撃沈できることを証明しましたが、一方で800㎏にも及ぶ魚雷を抱いた鈍重な機体で、激しい対空砲火と戦闘機の攻撃をかいくぐり、超低空で敵艦の有効射線に入り雷撃するという戦いには高い技量と胆力が求められ、戦いの過酷さ、非情さは三度雷撃したら生き残れないと形容されました。米海軍もその例外でなく、大勝した
ミッドウェー海戦の時でさえも米空母「
エンタープライズ」の雷撃隊は、確か全機、日本空母の直掩機に撃墜されています。
雷撃隊が雷撃を成功させ母艦に帰ってくる、すなわち千里往くトラ、千里を帰ることが、いかに大変であったか、雷撃隊員の勇気と強い使命感を感じずにはいられません。
参考:「
真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝」